夫婦・男女問題に関する書面作成と最新の情報を提供するサイト
製薬業界の臨床開発受託機関に勤務し、株主総会・取締役会の運営、契約法務、コンプライアンス事案への対応など豊富な実務経験を有する。現在、行政書士アークス法務事務所代表。不倫や夫婦問題に関して、累計相談実績8,000件以上、3,000件以上の書類作成の実績を有する。
夫婦の共有財産は、万一離婚に至ったときには、財産分与として夫婦で分割することが基本となります。
会社経営者や一定の金融資産を保有している人の中には、
財産を夫婦で共有せず各々で管理したい、離婚時の財産分与の対象外にしたいというニーズがあります。
これを実現するための契約が「夫婦財産契約」です。
今回は、この夫婦財産契約書の作成について、わかりやすく解説します。
結婚すると、各々の固有の財産と、夫婦の共有財産の区別が曖昧になり言い争いやトラブルの原因になることがあります。
財産の帰属について、お互いが「なんとなく〇〇だろう」といったように、ざっくりとした認識しか持っていないと
「それは私の財産のはず」
「結婚したんだから、二人の財産でしょう」
このような、おふたりの認識の相違がトラブルを招きます。
何も対処しなければ、婚姻後に夫婦で築いた財産は、夫婦の共有財産として扱われます。
妻が専業主婦であったとしても、「内助の功」(妻の家庭での貢献)が認められるため、
夫名義の財産に対して、妻は離婚するときに財産分与を請求することができます。
夫は、結婚後も自身の財産を守るために、財産の管理・処分の権限を明確にして、将来のトラブルを予防する必要があります。
イメージとしては、以下のような事項について、契約書で規定することになります。
結婚すると、結婚前は別々だったお互いの財布が、ひとつ(家計)になります。
夫婦が協力して婚姻後に築いた財産は、基本的には夫婦で共有することになります。
妻が専業主婦であっても、夫の収入は基本的に夫婦の「共有財産」として扱われます。
そして、共有財産は、万が一夫婦が離婚に至った場合、財産分与として一部を他方に譲り渡す必要があります。
夫婦財産契約書では、
結婚前から保有する財産の他に、結婚後の給与、金融資産の運用益、家賃などの収入、新たに取得する株式などを、
夫婦で共有せずに一方のみの特有財産(固有の財産)とする旨の契約をします。
会社経営者の場合には、
会社の持分や配当、結婚後に新たに設立する会社の株式等を、共有財産とせず財産分与の対象外とすることに合意し、
契約書として残しておくことが必要になります。
そのため、夫婦財産契約書の作成依頼は、会社経営者から
「自社株や婚姻後に築いた財産を、財産分与したくない」という内容の依頼がほとんどを占めています。
また、最近ではコツコツと積み上げた金融資産を離婚時に分割したくないという理由から、夫婦で個別に資産形成を目指す個人のお客さまからの依頼も増えています。
経営する会社の利益については、経営者とは別の人格(法人)に帰属するので、会社が生み出す利益は、もちろん会社のみに帰属します。
法人の利益そのものは、夫婦の財産や離婚時の財産分与とは関係がありません。
また繰り返しになりますが、「結婚前から」保有している会社の持分や、そこから生じる配当は、基本的に特有財産に該当し、共有財産には含まれません。
その一方で、「結婚後に」取得する持分(自社株)その他の株式、給与等の収入については、夫婦共有財産の対象となる可能性があります。
そのため、結婚後に取得するこれらの財産については、夫婦で共有しないことを契約しておく必要があるのです。
それぞれの特有財産(固有の財産)を規定して、特有財産については、夫婦の共有財産と異なり、各々が単独で管理・処分することができることを明確にします。
さらに、特有財産は、離婚に伴う財産分与の対象外とする旨を規定して、万一、将来離婚に至ることがあっても自身の財産を守ることを図ります。
婚姻前から保有する財産だけでなく、結婚後に取得する株式、家賃、利息、金融資産の運用益などを特有財産とする契約内容が一般的です。
また、上記の他にも毎月の給与(役員報酬)も、夫婦共有とせず、各々の特有財産にするケースが多いです。
毎月の給与も特有財産にして共有しないということは、夫婦で収入を完全に分けることになります。
しかし、実際には夫婦生活を過ごすなかで、食費その他の生活費や子どもの養育に関するお金など、どうしても共有せざるを得ない預貯金などが生じるので、
別途、これらの共有せざるを得ない財産に関する規定もセットで定めておく必要があります。
夫婦が共同で生活するためには、毎月生活費がかかります。
収入を共有する夫婦の場合は、ふたりの収入を合算して(共有して)、合算した金額をそのまま家計に充てることになります。
この場合は、どちらが家計を管理するのかという問題がありますが、基本的には、夫婦で協力して家計を運営していくことになります。
その一方、夫婦財産契約によってそれぞれの収入を分けて管理する場合には、どのように生活費を賄うのか、取り決めをする必要があります。
具体的には、生活費用口座として共用の銀行口座をいくつか設けて、別途協議によって決定する金額を毎月生活費として、当該共用口座に入金し、
それをもって家計を運営するという条件が一般的です。
生活費用の口座として指定した預金口座の残高は、夫婦の共有財産とします。
それとは別にこの生活費用口座から支出して購入した物や保険等のサービスも、共有財産として扱うことが通常です。
自身の特有財産は、別で切り分けて管理し、これは共有しません。
特有財産として各々の財産を確保した上で、それとは別に夫婦生活に必要なお金はふたりで共有するというスタイルです。
そうすることで、万一離婚に至った場合でも、財産分与の対象は、生活費用口座の残高とその口座から支出して購入した物やサービスに限定することとなります。
だだ、それでも完全に切り分けをすることができず、特有財産なのか、共有財産なのか、どちらかはっきりしない財産がでてきてしまうかもしれません。
その場合には、どちらかはっきりしない財産の帰属については、その都度協議して、帰属を決めるという条件にするか、
もしくは、はっきりしない財産は共有財産として扱い、もし離婚に至った場合には、財産分与の対象とするといった条件にしておきます。
結婚時に「お金に関する話題を出すことは、気が引ける」という人もいるかもしれません。
ただ、結婚前に財産について合意しておくことは、婚姻後のトラブルを抑止にとって、とても有用であると考えます。
財産の取り扱いを曖昧なままにしておくメリットよりも、明確にしてしまい将来の憂いをなくすメリットの方が、はるかに大きいのではないでしょうか。
「結婚式の費用はどちらが出した」、「マイホームの頭金はどちらの貯金から多く出した」、「会社を経営できているのも妻の支えがあってこそ、当然権利を主張させてもらう」等々、結婚後に、財産を原因とした言い争いがおきることは、決して珍しいことではありません。
金銭や財産に関する取り決めをしっかりと書面化して、すばらしい結婚生活をスタートされることを願います。
夫婦財産契約制度に伴う登記とは、おふたりの契約の効力を第三者にも及ぼすことを目的とする場合に利用する制度です。
日本ではほぼ利用されていない制度とされています。
法定財産制(民法の規定)と異なる取り決めを夫婦財産契約書で交わし、
さらにそれを第三者へ対抗するためには、法務局での登記が必要になります。
契約内容を法務局で登記することにより、夫婦間だけではなく契約の効果を第三者にも対抗できるようになります。
しかし、財産に関する約束は、夫婦間で取り決めれば十分であり、夫婦間の約束を第三者に対抗する実益がない(対抗する必要性がない)という理由から、
日本全体でも年間にごく僅かな登記がされているのみという状況のようです。
夫婦間における財産の取り決めは、それぞれの特有財産の規定や生活費の支払負担、離婚時の財産分与に関することがメインになりますので、
それらを第三者に対抗する必要性はないと言えるでしょう。
本ページを運営している、行政書士アークス法務事務所は、夫婦財産契約書の作成実績が豊富でこれまでに多くの経験・ノウハウを積み上げています。
また、当事務所では、手軽にプロ(専門家)に作成を依頼できる料金設定としております。
主にメール交換で、お客様の状況を聞き取り、文書の内容を決定していくので、最後までプライバシーを尊重したまま夫婦財産契約書を完成させることができます。
手間のかかる契約書の作成は、ぜひ当事務所にお任せください。
結婚後の夫婦生活は、数十年続くことになるので入口である入籍時にしっかりと約束を交わしておくことが重要です。ここで手間をかけることで将来に大きなちがいが生じる可能性があります。当事務所では、これまでに多くの婚前契約書を作成した実績を有していますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。
よくあるご相談