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結婚後に築いた財産は、2分の1ずつ分けることが基本です。
預貯金だけでなく不動産や住宅ローンなども含めて財産分与を考えることになります。
中には夫が住宅ローンの返済を続け、妻と子が自宅に住み続けるという条件で離婚するケースもあります。
今回は、離婚に伴う財産分与について説明します。
夫婦平等の原則から離婚時の財産は、2分の1の割合で財産分与するという考え方が基本になっています。
専業主婦で収入がなくても、いわゆる「内助の功」が認められます。
夫の収入のみで夫婦の財産を築いたとしても、夫の仕事を「妻が、育児・家事を負担して支えていた」ことが評価されます。
妻の家事・育児その他の支えがあったからこそ、夫は、仕事に専念でき財産を築くことができたという考え方をします。
このように、財産分与をするときは、まず2分の1を基本として話し合いをスタートします。
夫婦のどちらか一方に財産形成についての特別な貢献があれば、それを加味して分与割合を決めます。
しかし、どちらがどれくらい貢献したのか割合で数値にすることは難しいため、結局、半分ずつ分けるということになります。
例外として、夫が会社の経営など、個人の特別な能力・努力によって高額の財産を築いたというケースでは、妻の貢献度が通常よりも低くなるとされます。
そのような場合にまで一律に2分の1で分割してしまっては、逆に夫にとって不公平となってしまいます。
そのため、すべてのケースにおいて一律に等分しなければならないということではありません。
離婚後の財産分与の対象は、結婚後に夫婦が協力して築いた財産であれば「その名義は関係なく」夫婦の財産であると考えます。
たとえば、自宅の権利が夫名義になっていても、妻は、離婚時に財産分与を求めることができます。
同じように、預金の名義が夫なので、夫のものということではありません。
共同名義の預金口座をつくることはできないため、共有財産の名義をとりあえず夫にしているというようなイメージです。
実際の離婚時の財産分与では、夫名義の貯金が700万円、妻名義の預金が300万円あるとすれば、それを合わせて、計1,000万円を分けることになります。
次の財産は、夫婦共有財産に含まれず、財産分与の対象外となります。
上記の財産は、特有財産といってその財産を持っている一方の固有の財産となります。
そのため、財産分与の対象外となります。
結婚後に夫婦で協力して築いた共有財産であれば、名義を問わず財産分与の対象になるのですが、結婚前から保有していた貯金などは、結婚後に夫婦が協力して得た財産とは言えません。
それと同じように、親から相続した遺産や、他人から譲り受けた財産も、受け取った人の固有の財産となり、財産分与の対象外です。
親族から相続した財産を、離婚時の財産分与で配偶者に渡したくないというご相談をいただくことがありますが、上記のとおり相続した財産については、財産分与の対象外となりますので、配偶者に分与されることはありません。
共働き夫婦の場合であっても、基本的に妻が専業主婦である場合と考え方は同じです。
結婚中に蓄えた財産形成に対する、貢献度によって財産分与の割合が決まります。
夫と妻の収入が異なり、それぞれの名義の貯金があることが通常だと思います。
夫婦で収入額に差があったとしても、収入の低い夫婦の一方がその分、家事労働を多く負担しているかもしれません。
夫婦間で収入の金額・家事負担に著しい差がない限りは、財産形成に対する貢献度は平等と考えることが一般的となっています。
そのため、離婚時の財産を合算して、それを等分に分割する方法が基本になります。
また、夫婦で合意できる場合には各々の名義の財産は各々のものとして、離婚時において財産分与をしない(貯金は各々名義人のもの)という選択をすることもできます。
離婚時の夫婦共有財産を分割するわけですから、どれくらいの財産があるのか、はっきりさせる必要があります。
財産の全体像がわからければ、公平に財産分与することができません。
いくつかある預金口座の内の一つを隠されてしまう、そもそもその存在すら知らないということがあれば、認識していない財産は、分割の対象から漏れてしまいます。
「通帳開示請求」といって、相手に持っている通帳(残高)の開示を請求することになります。
ただ、相手が開示を拒めば、弁護士や裁判所のお世話になることになってしまいます。
そのため、日ごろからお互いの財産状況をオープンにして、夫婦共有財産の全体像を把握することが重要になります。
離婚を意識したのであれば、準備として「へそくり」など、相手の財産状況をできるだけ事前に確認しましょう。
財産分与を請求する権利は、離婚成立日から2年経過すると消滅してしまいます。
そのため、離婚成立日から2年以内に請求する必要があります。
離婚前後は、とにかく早く別れたいと、財産分与の話し合いなどせずに別れてしまい、
後になってから、夫名義の財産を分けてもらえることを知るというようなこともあると思います。
離婚成立日から2年以内に請求することができれば良いのですが、2年が経過してしまい請求できずに後悔するということがないようにしなければなりません。
なお、2年が経過しても任意の当事者の合意があれば、財産分与してもらうこともできます。
夫婦が協力して得た財産であれば、たとえ夫婦どちらか一方の名義になっていても、名義にかかわらず財産分与を求めることができます。
ここでは具体的にどのような財産が、財産分与の対象になるのについて、確認してみましょう。
預貯金など現金の財産は、もちろん財産分与の対象です。
もし夫名義の口座に預金されていても、結婚後に貯蓄したものであれば、財産分与の対象になります。
そして、結婚前から夫婦のいずれか一方が持っていた財産は、特有財産(固有の財産)となりますので、財産分与の対象になりません。
積立型生命保険などの保険商品は、預貯金に準じて財産分与の対象となります。
ちなみに、もし預貯金を隠されていた場合、いわゆる「へそくり」と呼ばれるものですが、離婚時に財産として認識できなければ、財産分与の対象にあがってきませんので、漏れてしまいます。
まずは離婚時における総財産を洗い出すことが、重要になります。
結婚した「後」に購入したマイホームも、基本は2分の1の割合で分与請求できます。
逆に、結婚する「前」に、夫婦のいずれか一方が購入した持家は、購入した夫または妻の特有財産(固有の財産)となるため、基本的に財産分与の対象にはなりません。
ただし、結婚する「前」に購入した不動産であっても、住宅ローンを夫婦で返済していた場合には、財産分与の対象となる可能性が高いといえます。
また、住宅ローンが残っている場合でも、持ち家を売却して売却価格が、売却時のローン残債以上である場合には、ローン精算後に残ったプラスの部分について、分与を求めることも可能です。
なお、財産分与として夫が妻に不動産を譲渡し、妻と子が、自宅不動産での居住を続け、夫がローンの返済を続けるという条件の財産分与をするケースもあります。
この場合には、住宅ローンを完済するまで、不動産の名義を夫から妻へ移転することはできないため、ローン完済後に、不動産の名義変更登記を行うことになります。
プラスの資産と同じように負の財産(住宅ローンを含む)も、離婚時に2分の1に分割することができます。
自家用などのローンや、生活費のキャッシングなどの借金も分割することができます。
夫婦の共同生活を営む上で必要だった借金は、プラスの財産と同じように離婚時に平等に分与されるべきという考え方があります。
しかし、貸し主(金融機関)の立場から見た場合、あくまで返済義務を負っているのは、借り入れの名義人のみということになります。
ローンの連帯保証人になっていない限り、借金の名義人以外の人は、基本的に返済義務を負いません。
そのため、ローン等の借金を平等に負担するという約束は、夫婦内での取り決めということになります。
財産分与における、住宅ローンの基本的な取扱いは、不動産を売却した上で、住宅ローンを完済し、残った財産価値があれば、それを平等に分けることになります。
このとき、売却価格の全額をもってしても、住宅ローンを完済することができない場合には、プラスの財産と同じようにローン残債を平等に分けるという考え方もあります。
夫婦のいずれかが個人事業をしている場合、基本的に事業用の預貯金も財産分与の対象になります。
その一方で、会社を経営している場合には、夫婦の財産と会社の財産は、分けて考える必要があります。
そして、基本的に経営する会社名義の財産は、離婚時における財産分与の対象になりません。
しかし、例外として、経営する会社が個人事業の域を出ずに、会社の財産であっても実質的には、個人または夫婦の財産であるような場合には、会社の財産も、実質的に夫婦が協力して築いた財産ということができます。
具体的には、会社の社員が夫のみ、または夫婦のみで経営しているよう会社は、実質的に個人事業と変わらないといえます。
このような個人事業の域を出ていない会社の場合は、たとえ会社名義の財産であっても、離婚時の財産分与の対象となる可能性があります。
さらに、会社名義の財産ではなく、会社の株式(会社に対する持分・経営権)は、基本的に財産分与の対象になると考えられます。
既に支給されている退職金は、財産分与の対象になります。
さらに、今後、退職金の支給を受けることに確実性がある「将来の退職金」も、財産分与の対象として認められる可能性があります。
妻の「内助の功」のおかげで、夫は、長年勤続することが可能になった、無事に勤め上げた対価として退職金を受け取るのであり、退職金も夫婦が協力して築いた財産であるという主張ができると考えられます。
なお、財産分与の対象は、退職金の支給対象期間のうち、結婚中に勤務した期間に応じた部分に限られます。
たとえば、勤続30年の退職金の場合、その内、結婚期間が20年であったときは、退職金全部に対して分与請求することはできず、結婚していた期間に応じて(今回であれば勤続30年のうちの20年分、すなわち退職金の2/3に対して)分与請求することになります。
厚生年金について「年金分割」制度により、離婚時に年金の分割をすることができるようになりました。
具体的には、婚姻期間中の厚生年金(標準報酬月額・標準賞与額)を分割することとなります。
「標準報酬総額」の多い方から、少ない方へ分割されることとになります。
年金分割には、合意分割と3号分割という二つの制度があり、合意分割は、当事者の合意により分割割合を定めことになります。
その一方で、平成20年の4月1日以降に第3号被保険者の期間がある場合で、第3号被保険者が年金の分割請求をしたときには、分割割合などの合意がなくても自動的に年金分割(標準報酬額の改訂)が行われます。
こちらが3号分割といわれるものです。
尚、年金分割も財産分与と同じように、離婚成立日の翌日から2年以内に手続きをしなければならない点に注意が必要です。
事実婚・内縁関係とは、婚姻の意思をもって夫婦としての生活があり、社会的(周囲)にも夫婦として認知されているが、入籍はしていない夫婦関係のことをいいます。
事実婚・内縁関係にある者は、法律婚に準じた法的保護を受けることが認められています。
事実婚・内縁関係を解消する際にも、夫婦の一方に対して財産分与を請求できます。
ただし、注意しなければならないのは、事実婚・内縁関係の場合、関係の解消原因が、離婚に準じた関係の解消であれば、財産分与を請求することができるのですが、相手方(パートナー)の死亡による離別の場合には、財産を承継することができません。
事実婚・内縁のパートナーは、法律上の「相続人になることができない」ため、相手が遺した財産について、法律上の相続人(血縁関係者)に相続されてしまいます。
死亡による離別のときパートナーは、財産の分与を請求することができなくなってしまうことに注意を要します。
そのため、遺言書などを作成して、一方が死亡した時に、遺産の一部がパートナーへ移転するように準備しておく必要があります。
早く離婚して楽になりたいと、財産分与の話し合いを十分にしないまま、離婚してしまうことはお勧めできません。
財産分与は、金額が高額になることもあり、夫婦双方が納得して合意に至るまでのハードルが高く、結論を導き出すまでに苦労するかもしれません。
また、たとえ夫婦間で合意に至ったとしても、離婚協議書を作成しないまま口約束で済ましてしまい、実際に財産を移転する段階でトラブルが発生してしまう可能性もあります。
離婚時の財産分与については、後のトラブルを予防するため離婚協議書を作成して、約束の内容を、文書にして明確に残しなければなりません。
離婚協議の作成は、こちら→「離婚協議書(公正証書)の作成」でくわしく説明しています。
離婚時には、慰謝料、親権・養育費、財産分与などの条件を本人同士で話し合って決めなければなりません。白紙の状態で話し合うよりも協議を始める前の段階から専門家が書面作成を通じて関与することで、より円滑に離婚協議を進めることができます。当事務所では、これまでに多くの離婚給付公正証書作成した実績を有していますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。
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