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慰謝料請求の時効期間について

日本行政書士連合会 登録番号14130747
行政書士アークス法務事務所
記事の執筆者(行政書士 大谷一也)
行政書士イメージ

製薬業界の臨床開発受託機関に勤務し、株主総会・取締役会の運営、契約法務、コンプライアンス事案への対応など豊富な実務経験を有する。現在、行政書士アークス法務事務所代表。不倫や夫婦問題に関して、累計相談実績8,000件以上、3,000件以上の書類作成の実績を有する。

不貞行為の慰謝料請求における消滅時効

不倫相手に慰謝料請求したいけれど、あまり大ごとにはしたくない…

今は精神的に弱っているので、もう少し落ち着いたら動いてみようか…

今すぐ慰謝料請求に踏み切れないという人は、時効という慰謝料を請求できる期限があるので注意してください。

今回は、慰謝料請求と時効について、わかりやすく解説します。

いつか落ち着いたら請求しようと考えていると…

慰謝料請求は3年以内にする必要がある

不倫の被害者は、不倫した当事者に慰謝料の支払を請求することができます。

ただ、慰謝料請求には時効という期限があり、無期限でいつまでも請求できるわけではありません。

慰謝料請求できる権利を、いつまでも放置すれば時効によって権利が消滅してしまいます。

具体的には、不貞行為の慰謝料請求の場合、
 

不貞行為の事実と、②不貞相手、この二つを知った時点から、3年以内に請求する必要があります。

なお、離婚が成立した後に、元配偶者に対して離婚に伴う慰謝料を請求する場合には「離婚成立日の翌日から」3年以内に請求をする必要があります。

「決心がついたら、いつか慰謝料請求しよう」などと考えているといつの間にか慰謝料を請求することができなくなってしまうことがありますので、時効の期間には十分注意する必要があります。

少し落ち着いたら動き出そうと考えていて、いつの間に時効期間が過ぎてしまっていたというご相談は、意外にも少なくありません。

 

「権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の考え方

法律では、慰謝料を請求できる期間に制限が設けられています。いつまでも永久に請求できるわけではありません。

慰謝料請求をすべき相手と、損害を知ってから3年の経過という時効期間に加えて、それ以外にも、不倫や浮気などの不貞行為があったときから20年(除斥期間)の経過という条件もあります。

これは不倫の事実を知らなくても、この20年という除斥期間が経過すれば慰謝料請求できなくなるという制度です。

そのため、知ったときから3年、もしくは不貞行為から20年のいずれかが到来してしまうと、慰謝料請求できなくなります。

被害者がいつまでも慰謝料請求しなければ、請求される相手も、請求されるのか、されないのか、分からないという不安定な状況が続きます。

消滅時効という制度には、このような不安定な権利関係を、早期に確定させるという趣旨があります。

いつまでも権利を行使しないのであれば「その権利はなくなっても大丈夫だよね」という少し乱暴ですが、そのような考え方をします。

 

相手から「承諾」してもらうことで時効を止めることができる

慰謝料の時効は、相手が慰謝料の支払いを「承諾」した場合にはストップします。

そのため、相手から支払いの承諾があったときには、誓約書や和解合意書などの書面を作成して慰謝料の支払いを「承諾」している証拠を残しておきます。

誓約書等の書面を取得することによって、慰謝料の支払が確定します。

「落ち着いてから時期をみて慰謝料請求をしよう」とお考えの方は、時効期間が経過する前に、できるだけ早く行動することをお勧めします。

相手から不貞行為の事実と、慰謝料の支払義務を認めた書面を取得することはとても重要です。
 

不倫した人は、3年以上経っても慰謝料請求される可能性がある

3年の消滅時効については、不倫をして「慰謝料請求されるかもしれない」という加害者側も、もちろん知っておくべきルールです。

不倫をした人は、被害者からある日突然、慰謝料請求されることを覚悟しなければなりません。

時効期間は、3年間ですが相手と別れてから3年間が経過すれば安心かというと、そうではありません。

3年の消滅時効のスタートは「被害者が不倫の事実と、相手を知った時」です。

たとえば、被害者が5年前の不倫を最近になって初めて知ったというケースもあるでしょう。

そのようなケースでは、すでに不倫から5年が経過していますが、被害者が不倫を知ったときから、さらに3年間は慰謝料請求が可能ということになります。

そのため、慰謝料請求する人がいつ不貞行為の事実と、不倫の相手を知ったのかがポイントになります。

過去に不倫をした経験のある人は、もしかすると、不倫関係を清算してすっきりしたという気持ちかもしれません。

しかし、例え不倫関係を解消したとしても、数年後、突然被害者から慰謝料請求される可能性がないとは言い切れません。

一時の感情に溺れることなく、上記のような代償を支払う必要がある、社会的責任を負っていることを自覚したうえで、安易に不貞行為を行わないようにしなければなりません。

既婚者男性の強い求めに応じて、やむを得ず短い間、不貞関係を持ってしまったという人もいるかもしれません。

そのようなことに身に覚えがある人は、後日、相手男性の配偶者から慰謝料請求されたときのことを、今から考えておかなければなりません。

後日、相手の配偶者から慰謝料請求されたときに、慰謝料の支払いをどうするのかについて、あらかじめ相手と書面を交わしておくという方法も考えられます。

将来、相手の配偶者から慰謝料請求されたときの対応に関する書面は、以下のリンクページでくわしく説明しています。

 

ダブル不倫の場合は、相手方と和解合意書を作成する
契約書へのサイン

既婚者同士のダブル不倫が発覚し、その後相手側ときちんと話し合いができた場合は、合意内容について示談書(和解合意書)を作成します。

話し合いの結論をきちんと示談書(和解合意書)として残しておかないと、相手の離婚など事情の変化や、心変わりなどで、後から問題を蒸し返されても反論することが難しくなります。

一度交わした口約束を反故にされるということは、頻繁に起こり得ることです。

「あの時にきちんと示談書を作成しておけば…」と後悔の連絡を頂くことも多くあります。

厳しい言い方になってしまいますが、書面を作成しなければならないタイミングであったにもかかわらず、その労力・手間を省いた結果であると言えます。

話し合いを終えた後、相手側にどのような心境の変化が生じるかは、誰にも分かりません。

特に、ダブル不倫の場合には、相手方がその後に離婚に至ることがあり得ます。

「当初は慰謝料請求するつもりはなかったが、やはり腹の虫が収まらない」といったように、事情の変化・心境の変化による問題の蒸し返しが起きる可能性があります。

示談書・和解合意書や誓約書を作成して、お互いに署名捺印しておきます。

その書面の内容を当事者が遵守することによって、はじめて一区切りつけることができたと言えるのです。
 

まとめ

本ページでは、主に慰謝料請求権の消滅時効について、説明しました。

当事務所にも「数年前の不倫について慰謝料請求できますか?」といった相談をいただくことがあります。

過去の不倫であっても、不倫の事実と相手を知ったのが最近であれば慰謝料請求することができます。

しかし、不倫は認識していたけれど、当時、慰謝料請求しないまま放置してしまい、その後に時効期間が経過したという場合には、残念ですが相手から慰謝料を受け取ることは困難と言わざるを得ません。

不倫の被害者側は、心身共に辛い状況に置かれるため、慰謝料請求なんて行動を起こす気になれないという状況にあることは十分に理解できます。

しかし、前向きな人生を歩むために、過去ときっちりと区切りをつけるという意味でも、不貞相手の問題を保留することなく、少しずつでも今できることをやっておくことが重要だと思います。

 

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