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不貞行為の慰謝料の支払いや不貞関係の解消を約束する示談書のテンプレートと、作り方・注意点を紹介します。
テンプレートを利用した自作の示談書で対応できる場合もありますが、
慰謝料を分割にする場合やダブル不倫の場合、その他にも何らかの特別な約束をする場合には、弁護士や行政書士へ示談書の作成を依頼することをお勧めします。
示談書(合意書)のひな形・テンプレートを紹介します。
はじめに標準的なサンプルを紹介します。
その後に、各条文ごとの内容をくわしく説明します。
ひな形における登場人物は、次の3名です。
不倫相手「乙」と夫「丙」の不倫が、妻「甲」に発覚しました。
その後、妻「甲」と、不倫相手「乙」が話し合い、慰謝料支払いについて合意できたので、次の示談書を取り交わして、解決することになりました。
示 談 書
[被害者氏名](以下「甲」という)と[加害者氏名](以下「乙」という)は、次のとおり合意し、和解した。
第1条(不貞行為)
乙は、〇〇年〇月から〇〇年〇月までの間、甲の夫である[夫氏名](以下「丙」という)と、継続的に不貞行為(以下「本件不貞行為」という)を行い、甲に対し精神的苦痛を与えた事実を認める。
第2条(関係解消)
乙は、丙との不貞関係を完全に解消し、今後、丙と連絡(面会、電話、電子メール、SNS、第三者を介した連絡等の一切を含む)または接触しない。
第3条(慰謝料)
1.乙は、甲に対し、本件不貞行為の慰謝料として、金〇円を支払う義務があることを認め、これを〇〇年〇月〇日限り、甲の指定する金融機関の預金口座へ振込む方法で支払う。振込手数料は乙の負担とする。
2.乙は、丙に対する、慰謝料支払債務の求償権を放棄する。
第4条(守秘義務)
甲及び乙は、本件不貞行為に関し、インターネットへの書き込み・書面掲載・口頭による情報の流布・架電・電子メールその他方法の如何を問わず、本件不貞行為に関する情報をみだりに第三者に対し公開しないことを約束する。
第5条(迷惑行為の禁止)
甲及び乙は、相手方を訪問すること、当事者のいずれかを誹謗中傷すること、その他相手方に不利益となる一切の行為を行ってはならない。
第6条(違約金)
乙は、第2条の定めに違反した場合、違約金として金〇円を、甲へ支払う義務を負う。
第7条(和解解決)
甲及び乙は、本示談書の締結及び慰謝料支払い済みをもって、本件不貞行為について解決したものとし、追加的な請求や異議を述べない。
第8条(清算条項)
甲及び乙は、両者の間に本示談書の定めの他、本件不貞行為に関し、なんらの債権債務も存在していないことを確認する。
示談成立の証として、本示談書を2通作成し、甲及び乙による署名捺印のうえ相互に1通を保有する。
年 月 日
甲)
住所
氏名
乙)
住所
氏名
示談書の基本的なイメージ、考え方を紹介するためにひな形(テンプレート)を紹介しています。慰謝料の分割や既婚者同士のダブル不倫の場合など、個別の案件内容に応じて上記内容を変更する必要があります。
示 談 書
[被害者氏名](以下「甲」という)と[加害者氏名](以下「乙」という)は、次のとおり合意し、和解した。
タイトルは、どんなものでも法的効果に影響しません。
「示談書」「合意書」「契約書」と、一般的なタイトルであれば自由に決めることができます。
今回のような書面は「示談書」もしくは「(和解)合意書」とすることが一般的です。
お互いに合意が成立(示談が成立)したこと、今回の不倫について、和解したことを確認します。
<既婚者同士のダブル不倫の場合>
ダブル不倫でお互いの夫婦が不倫の事実を知っている場合には、
こちら側の夫婦と、相手の夫婦の全員(4名)がサインをする、4者間で交わす示談書を作成します。
ダブル不倫の場合は、それぞれの夫婦の被害者となる二人がお互いに相手方に対して慰謝料請求できます。
お互いの夫婦で同額の慰謝料を請求し合っても仕方がないので、最終的にはお互いに「慰謝料請求しない」という結論に至ることが多いです。
しかし、もしダブル不倫で【不倫相手の配偶者が、まだ不倫に気付いていない場合】、
こちらだけ先に示談してしまうと、後日、不倫を知ったとき後になってから慰謝料請求されるということが考えられます。
ダブル不倫の場合は、後日、相手から慰謝料請求があったときに、こちらも改めて対応できるような取り決めをする必要があります。
さらに、もし今回100万円の慰謝料を受け取る場合、後日、相手側の配偶者が不倫の事実を知ったときに
こちらが受け取った以上の金額(たとえば150万円)を請求してくるかもしれません。
そのようなことがあった場合を想定して対処しておく必要があります。
ダブル不倫の規定は複雑で、安易に自作で示談書を作成してしまうと、一方の夫婦だけが不利になってしまうことが起こりやすいので、特に注意してください。
第1条(不貞行為)
乙は、〇〇年〇月から〇〇年〇月までの間、甲の夫・[夫氏名](以下「丙」という)と、継続的に不貞行為(以下「本件不貞行為」という)を行い、甲に対し精神的苦痛を与えた事実を認める。
不貞行為をしたのは誰か、当事者の関係性について記載します。
不貞行為があったことを、しっかり書いておくことが大切です。
後から不貞行為の事実が曖昧にならないよう、不貞期間まで書きます。
第2条(関係解消)
乙は、丙との関係をに解消し(*1)、今後、丙と連絡(面会、電話、電子メール、SNS、第三者を介した連絡等の一切を含む)または接触しない。
*1「連絡先をすべて削除したうえで」と追記しても良い
不倫相手に、不貞関係の解消を約束してもらう条文です。
二度と連絡・接触してはならない旨を明記します。
可能なら「連絡先を削除する」ことも約束してもらい、条文に盛り込むこともできます。
不倫相手と職場が同じなど、完全に会わないと約束できないときには、
「私的に会わない、私的に連絡しない」といったイメージで、書き方を工夫します。
さらに違反したときのペナルティを定めて違反を抑止することが大切です。
(ペナルティについては、少し先でくわしく説明します)
不倫相手から「慰謝料を受け取る場合」には、慰謝料とその支払条件を示談書に定めます。
慰謝料の支払いに関して、次の4項目を示談書で明確にします。
慰謝料を分割にするときは、毎月の支払金額、分割回数などの条件を示談書で定めます。
分割の場合には、途中で支払いが滞ってしまった場合に備えて、支払いがストップしたときは、残金を一括して支払う約束をしておきます。
慰謝料を分割支払いにする場合には他にも注意点がありますので、以下のリンクページで、くわしく説明します。
【慰謝料を分割払いにするときの注意点】
一括払いの場合には、次のようなイメージの条文になります。
第3条(慰謝料)
1.乙は、甲に対し、本件不貞行為の慰謝料として、金〇万円を支払う義務があることを認め、これを〇〇年〇月〇日限り、甲の指定する金融機関の預金口座へ振込む方法で支払う。振込手数料は乙の負担とする。
2.乙は、丙に対する、本件不貞行為の慰謝料支払い債務に基づく求償権を放棄する。(*2)
第1項は、慰謝料支払についての条文です。
慰謝料の支払日は、示談書(合意書)の締結から、7日以内、10日以内、14日以内、30日、60日以内など、任意の期日にすることができます。
〇日以内ではなく「〇年〇月〇日まで」と特定の支払期日を決めることもできます。
土日祝日の場合には、金融機関の休日で入金が反映されないことが考えられるので、
「金融機関休日の場合は、翌営業日とする」といった約束をしておくと、仮に期日が日曜日であったとき、期日が翌営業日の月曜日まで延びることになります。
さらに、銀行口座へ振込みで慰謝料を支払う場合は、「振込手数料の負担」についても決めておくことが通例です。
慰謝料の支払いは、銀行振込み、または現金手渡しのいずれかの方法で支払われることになります。
もし現金払いと銀行振込で迷っているときは、別ページで説明しているので参照してください。
3条慰謝料の(*2)は、「求償権」の放棄についての条文です。
ここも少し複雑ですので、わかりやすく説明しますね。
仮に不倫相手のみが、妻「甲」に慰謝料を支払った場合、不倫相手は支払った慰謝料の一部を、夫「丙」にも負担してほしいと請求できるというルールがあります。
不倫相手と夫が共同して、妻に対して「ひどいこと」をしたと考えます。
そのため、本来は加害者の二人は、妻に対して、共同して慰謝料を払うものであると考えます。
仮に、妻の被害総額が100万円とした場合で、不倫相手が妻に100万円全額を支払った場合、
不倫相手は支払った慰謝料100万円のうち、半分の50万円を夫「丙」に対して負担してほしいと要求する権利があります。
これを求償権といいます。
このとき、妻「甲」としては、不倫相手から夫に求償されてしまうと、夫婦は同じ家計で生活しているため、
せっかく相手から受け取った慰謝料の一部を、夫婦の家計から相手に対して返金するのと同じことになってしまいます。
そのような不倫相手からの求償を防ぐために、求償権の放棄を約束してもらう必要があります。
求償権については、以下のリンクページでくわしく説明します。
第4条(守秘義務)
甲及び乙は、本件不貞行為に関し、相互にインターネットへの書き込み・書面掲載・口頭による情報の流布・架電・電子メールその他方法の如何を問わず、本件不貞行為に関する情報をみだりに第三者に対し公開しない。
第三者に対して口外・公開しないことを約束します。
腹いせに不倫の経緯をSNSで公開したり、職場で不倫の事実を広められないようにするための条文です。
もし職場やご近所・共通のコミュニティー等へ、今回の不倫に関するウワサを広められてしまえば大きな不利益を被ってしまいます。
第5条(迷惑行為の禁止)
甲及び乙は、相手方を訪問すること、当事者のいずれかを誹謗中傷すること、相手方に不利益となる一切の行為を行ってはならない。
お互いに相手の自宅を訪問したり、相手の名誉を害するような迷惑行為をしないことを確認しておきます。
誹謗中傷などの迷惑行為をしないことを戒め、相手の私生活の平穏を侵害しないことを確認するための条文です。
第6条(違約金)
乙は、第2条の定めに違反した場合は、違約金として金50万円を、甲へ支払わなければならない。
示談書に違反して再び会っていたとき、連絡したときの違約金を定めます。
示談書に違反した場合に、不倫相手に違約金を請求する根拠となる条文のため、とても重要です。
ただ、相手には目一杯のペナルティを課しておきたいと、違約金を過大な金額にしてしまうと、無効になってしまう可能性があります。
連絡・接触違反では20万円から50万円程度が妥当な金額と言われています。
それでは少なすぎる、抑止にならないと考える人もいると思います。
裁判の判例で、悪質な連絡・接触違反の場合には高額の請求が認めらているものもありますが、
単純に「違反したら100万円」などとしてしまうと、無効を主張される可能性が考えれるため、
高額のペナルティを課す場合には、記載方法を検討する必要があります。
第7条(和解解決)
甲及び乙は、本契約の締結及び慰謝料支払い済みをもって、本件不貞行為について解決したものとし、追加的な請求や異議を述べない。
示談書を取り交わした後は、基本的に違反がない限り、お互いに追加的な請求はできなくなります。
「やっぱり納得できない」と、問題を蒸し返すことはできません。
ただ、示談書違反があった場合には、相手に対して、きちんと法的請求ができる旨を一言付け加えておくといいでしょう。
第8条(清算条項)
甲及び乙は、両者の間に本示談書の定めの他、本件不貞行為に関し、なんらの債権債務も存在していないことを確認する。
この条文は、示談書に書かれていることの他に、お互いになにも義務を負っていないことを確認するための条文です。
示談書において必須の条文となります。
この条文は、後出しジャンケンのような主張を防止することを目的としています。
たとえば示談書を交わし終わったと思っていたのに、後日、相手から次のようなことを言われてしまうと困ってしまいます。
「当時、デート代をすべて私が負担していたので、その支払った分の代金を返してほしい」
せっかく示談を取り交わして解決したはずが、後からこのようなクレームを入れられてしまうと、いつまでたってもトラブルを解決できなくなってしまいます。
示談書を交わす時点で主張されていない権利や義務を、後出しすることはできないことを確認します。
示談書は不倫相手に作ってもらえばいいと考える人もいるかもしれません。
しかし、相手に書面を用意させてしまうと、本来は要求できるこちらの権利が削られていたり、
最悪のケースは、抜け穴のようなものがあり、相手に違反があったときでも、こちらから法的請求ができないといったことが起きるかもしれません。
相手に任せて、万が一のときに役に立たない示談書を交わすことは避けなければなりません。
また、相手との話し合い次第となりますが、示談書自体はこちらで用意して、相手に作成費用を負担してもらう(または折半する)という方法もあります。
その場合には、費用の負担についても示談書で定めることになります。
慰謝料を分割支払いにする場合には、公正証書を作成するメリットが大きいです。
その一方で、慰謝料を一括で受け取る場合、公正証書を作成するメリットは少ないです。
公証人役場で公正証書を作成しておけば、もし金銭の支払いに不払いがあった場合には、公正証書に基づき相手の財産の一部差し押さえなどの強制執行の手続きをすることができます。
そのため、公正証書を作成することでお金の支払いを促すという意味においては、強力な効果を期待することができます。
ただし、慰謝料を一括で支払う条件の場合、期日にきちんと入金があれば、それで済むことですし、そもそも慰謝料を支払うつもりがなければ示談書へのサインにも応じないと考える方が自然です。
また、公正証書を作成するためには、基本的に本人両名が揃って平日日中に公証役場を訪問する必要があるなど、作成のハードルは少し高いです。
そのため、一般的に慰謝料が一括支払いの場合には、示談書の取り交し飲みを行い、公正証書まで作成することはありません。
しかし、慰謝料が分割の場合には、分割金が途中で滞ったときに備えて、公正証書まで作成しておくケースがあります。
示談書に捺印する印鑑は、通常「認印」を使用します。実印でなければ効力が生じないということはありませんし、実印で押印しても、認印で押印しても、どちらも示談書の法的効果に影響はありません。
あらかじめ示談書の内容を確認してもらい、双方が内容に合意できた場合、示談書の取り交しは郵送でやり取りすることもできます。
一方が先に示談書2部に署名押印をして、2部とも相手に郵送します。
2部を受け取った相手も、同様に署名押印をして、その内の一部を自分で保管し、もう一部を返送します。
このとき、示談書の日付は2部とも必ず同一の日付にする必要があります。
作成した示談書は、まったく同一の文書を2部作成して、それぞれが保管しておきます。
将来もし何かトラブルが生じたときには、一方に有利な証拠として利用することができます。
お金の支払いなど、有効な内容であれば法的拘束力が生じるので、基本的には、示談書で規定した(約束した)お金の支払いについて、示談書に基づいて法的請求をすることができます。
不倫や浮気に関する書面の作成は、自分たちでできるとお考えかもしれません。ただ、法的効果のある書面を作成するためには、一定の法律上の知識が必要になります。当事務所では弁護士等の意見も踏まえながら、これでに数千件の浮気に関する書面を作成した実績とノウハウを有しています。法的にも有利な証拠として利用可能な、かつ浮気防止に効果的な書面を作成することができます。
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