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不倫の慰謝料が減額される理由

日本行政書士連合会 登録番号14130747
行政書士アークス法務事務所
記事の執筆者(行政書士 大谷一也)
行政書士イメージ

製薬業界の臨床開発受託機関に勤務し、株主総会・取締役会の運営、契約法務、コンプライアンス事案への対応など豊富な実務経験を有する。現在、行政書士アークス法務事務所代表。不倫や夫婦問題に関して、累計相談実績8,000件以上、3,000件以上の書類作成の実績を有する。

高額の慰謝料請求をされて困ったときの対応方法

被害者から請求された慰謝料の金額があまりにも高いので、減額してほしい。 

何か減額できる理由はないか、、、それをどうやって相手へ伝えればいいのか?

相手と減額の交渉をするためには、「どんな理由があれば慰謝料が減額されるのか」を、きちんと理解する必要があります。

減額できる理由を理解できれば、高額の慰謝料を請求されても説得力をもって相手と話し合うことができるようになります。

慰謝料が減額される主な理由

長期間の不倫と、短期間の不倫では、慰謝料の金額も違ってきます。

例えば不貞行為を1度しか行っていない、不貞期間が短いといった事実は、慰謝料の減額理由になります。

このように慰謝料を減額するきちんとした理由があれば、被害者へ少し金額を下げてほしいと、減額を申し出ることができます。

ただし、減額理由となる事情があることを考慮して、被害者側が初めから低い金額を請求しているケースもあります。

そのような場合には、すでに低く抑えられた金額からさらに減額を要求することは難しいでしょう。

 

どんなことが慰謝料の減額理由になるのか、確認してみましょう。

①相場以上の高額請求

不貞行為の慰謝料の相場は、数十万円から300万円程度の範囲とされています。

この金額にかなり幅があります。

幼い子のいる夫婦が離婚に至るようなケースや、嫌がらせのようなことをして被害者の精神的苦痛を増大させたケースでは、慰謝料が高くなる傾向があります。

しかし、特別な事情もなく、不倫期間も短期間であったにもかかわらず、数百万円といった驚くような高額の請求がされることがあります。

「許さない」という被害者側の感情が、このような高額の請求に向かわせているのだと思いますが、相場の金額を大きく超えた慰謝料を請求された場合には、減額の申出をすることができます。

 

実際の事例では、、
不倫した本人たちへの怒りの感情から、高額の慰謝料請求がされるケースは少なくありません。請求している方も、そのまま満額の支払いが認められるとは考えていないことが多いので、しっかりと減額の申し出をすべきケースといえます。しかし、中には減額交渉することに精神的な負担を感じるので、相手の言い値を支払ってしまうという人もいます。

②不貞期間が短かった


不倫の期間が短かった場合や、1度しか不貞行為を行っていない場合などは、慰謝料の減額理由となります。

ただ、どれくらいの期間が短くて、どれくらいの期間が長期なのかを一律に決めることは難しいです。

不貞期間が数か月程度で、実際に行われていた不貞行為の回数も1回から3回程度などに留まるのであれば、短期間として減額を提案する理由になり得ます。

不貞行為の回数・期間と、慰謝料の関係については、以下のリンクページ「不貞行為の期間と回数」でくわしく解説していますので、参考にしてください。

 

実際の事例では、、
この「不貞期間が短いこと」を理由として、慰謝料が減額となるケースが一番多いです。

③被害者側の結婚している期間が短い


夫婦の結婚期間の長短も、慰謝料の金額に影響を与えるとされています。

結婚期間が長い場合は、慰謝料の増額要因とされ、

反対に、相手夫婦の結婚期間が短い場合には、慰謝料の減額要因になるとされています。

どれくらいの期間であれば結婚が短いと言えるのか、明確な基準はありません。

ただ、目安として結婚期間が3年以下である場合、慰謝料の減額要因となる可能性があると考えられます。

しかし、被害者側にとってしてみれば、新婚にもかかわらず不倫されていたという状況は、

「むしろ新婚だからこそより大きな被害を受けた」と考えているかもしれません。

そのため相手の結婚期間が短いことを理由として減額を求めるときには、相手の感情を逆なでしないように十分に配慮する必要があります。

 

実際の事例では、、
被害者の立場の人に対して、結婚期間が浅い場合には、高額の慰謝料請求は難しい旨を説明しても中々納得してもらえないことがあります。当事者からすれば、新婚の大切な時期だからこそ被害が大きいというのが減額に納得できない理由です。

しかし、裁判の判例などでは、結婚期間が短いことが慰謝料の減額理由になると考えられていますので、もし結婚期間が短いにもかかわらず高額の慰謝料請求があった場合、それは減額を申し出る理由になると言えるでしょう。

④不仲・夫婦関係が破たんしていた

不倫の開始時において、すでに相手の夫婦関係が破たんしていた場合には、基本的に慰謝料を支払う責任は生じません。

不倫があろうと、なかろうと、すでに相手の夫婦関係は破たんしていたわけですから、不倫の責任を問われないという考え方をします。

しかし、だからといって安易に「夫婦関係の破たん」を主張して、責任を逃れられると考えてはいけません。

裁判所は通常「破たん」の認定を簡単には行いません。

本当に夫婦関係が修復の見込みもないほど、完全に破たんしているような状況でないと「破たん」していると認めてくれません。

そのため、夫婦関係の破たんを理由に慰謝料支払いを免れることは、現実的には難しいケースが多いと思います。

単に夫婦が不仲であった、喧嘩が絶えなかったといったような状況では、「破たんしている」とは認められません。

夫婦関係が破たんしている状況とは、長期間別居していて日ごろから夫婦間に交流がない、すでに離婚協議をはじめているというように、完全に夫婦関係が終わっている状態のことをいいます。

破たんを理由に不倫の責任を免れるためには、不倫がはじまる以前から相手の夫婦がこのような状態であったとことが必要です。

なお、そこまで完全に夫婦関係が破たんしていなかった場合でも、例えば、被害者も、異性と不倫していたというような特別な事情があれば、

相手の夫婦関係が円満ではなかったことを理由にして、慰謝料を減額するよう提案できる可能性があります。

実際の事例では、、
夫婦関係が破たんしていると聞いていたが「実際には破たんしていなかった」というケースが多いです。既婚男性が不倫関係にある場合には、女性に対して、妻とは上手くいっていない、もうすぐ離婚すると思うといったことを言うのは、よくあることなので鵜呑みにしてはいけません。

本当に、夫婦関係が破たんしていたり、実際に離婚協議がはじまっている場合には、慰謝料を支払う義務を免れることができる可能性がありますし、減額を申し出る理由にもなります。

⑤騙されていた

相手から独身と騙されていた場合や「もうすぐに離婚する」とウソをつかれていた場合には、これも減額理由にできる可能性があります。

しかし、途中から相手が既婚者であると知ったにもかかわらず、その後も不貞行為を続けていたような場合には、慰謝料の減額は難しくなります。

もうすぐ離婚すると騙されていた」というケースもよくあります。

このようなケースで、ただ単純に相手の「離婚する」という言葉を鵜呑みにしていただけでは、慰謝料の減額は認められにくいです。

「妻とは上手くいっていない」「将来的には離婚するつもり」といった言葉は、不倫の場面でよくあるウソである可能性を疑うべきだからです。

しかし、離婚協議の内容をくわしく聞かされていたなど、言葉巧みに騙され、相手の離婚を信じても仕方がないような状況があった場合には、

慰謝料の減額が認められる可能性があります。

男性側が、積極的にウソついて言葉巧みに女性を騙していたという事情がある場合には、その分、女性の責任は軽くなると考えることが自然でしょう。

実際の事例では、、
言葉巧みに女性を騙して、不倫関係を続けようとするケースがあります。男性が当初から独身と偽っていたり、中には、架空の離婚協議書を作って、妻とこの離婚条件で話し合っているとウソを付いていた(実際には離婚の話はまったくしていない)というケースもありました。

このように、ウソが巧みで信じても仕方がない事情がある場合には、慰謝料が減額される理由になり得ます。

⑥不倫を強要されていた

こちらは不倫関係の解消を求めていたのに、相手が関係の解消に応じてくれないというケースもあります。

さらに、職場での権力や上司の地位を利用して、不倫関係を継続させられていた、何らかの弱みを握られて不倫関係を強要されていたというような事情があれば、

それらは慰謝料減額の理由になります。

よくあるケースは「別れるのであれば(妻や夫に)これまでの不倫関係をすべてバラす。」と脅されているケースです。

誠実に不倫関係の精算を申し出ているのに、相手が受け入れず、配偶者にこれまでの関係をバラすと脅され、不倫関係を継続させられていた事情があれば、

慰謝料減額の材料になる可能性があります。

さらに相手の行為は、犯罪行為に該当する可能性もあります。

 

慰謝料の減額を提案する方法

減額の話し合いは頻繁に行われている


相場といわれる金額を大きく超えた慰謝料の請求がされることがあります。

「できるだけ高額の慰謝料を受け取らなければ気が済まない」と、被害者が感情的になっていることが考えられます。

その一方で、慰謝料を請求された側は、慰謝料を支払う意思はあるけれども、請求された金額があまりに高額でそのまま支払うことができないということもあるでしょう。

そのため、「金額を下げてほしい、〇万円であればすぐに支払うことができる」といった減額の話し合いが必要になります。

しかし、加害者側から、むやみやたらに金額を下げてほしいと言っても、相手との交渉がスムーズに進まないかもしれません。

上記で説明したような合理的な理由があって、はじめて減額の申し出ができると考える必要があります。

実際の事例では、、
不貞行為の示談、慰謝料請求に関する示談は、本人同士での話し合いが基本のため、被害者側と加害者側で、慰謝料の減額についての話し合いが頻繁に行われています。

謝罪、支払の意志があることを伝える

慰謝料の減額を申し込むときには、不貞行為を行ってしまったことに対して、謝罪し、慰謝料を支払う意思(きちんと責任をとる意思)があることをまず伝えることが第一です。

被害者側も、加害者から誠意のある対応があって、はじめて減額の話し合いを考えることができるというものです。

いきなり減額交渉をはじめて、被害者の感情を逆なでしないように気を付けなければなりません。

まずは、これまで行ってきた迷惑行為について謝罪することになるでしょう。

ただし、もし相手から事実と異なる指摘がされているときは、事実と異なっていることをしっかり伝える必要があります。

誤解していることがあれば、誤解を解いてください。

単に平謝りに謝るだけではなく、事実と異なる部分については認めることができないことを、相手に伝えても良いでしょう。

誠実に謝罪しつつ、なおかつ事実と異なることがあれば、きちんと伝える。

なかなかハードルが高いですが、話し合いで解決するためには、しっかりやっておかなければなりません。

あなたが慰謝料を支払う意思があるときには、きちんと相手に「慰謝料を支払う意思がある」ことも伝えて良いでしょう。

支払う意思を明確にしたうえで、そこから減額の交渉をはじめることになります。

ただし、あくまでも「慰謝料を支払う意思はある」ということを伝えるのであって、相手から「請求された金額をすべて支払う」と伝えるわけではありません。

 

相手の意見を聞き、相手が納得できる慰謝料の金額を探る

過大な請求を受けているときには、妥当と考える金額を提示したうえで、いくらであれば支払いに応じることができるのか、こちらの意思を伝えます。

もちろん、こちらが支払うことができ、かつ、相手も納得できる金額を提示する必要があります。

このとき、大幅な減額の申し出によって相手が「話にならない」「弁護士に依頼するしかない」という決断に向かわないように配慮します。

むやみに低い金額を提示すれば良いということではありません。

どれくらいの金額であれば、相手が納得してくれる可能性があるのか、十分に相手の意見を聞き出す必要があります。 

あくまでも、当事者同士の話し合いで解決をすることを目的としています。

最終的に双方が納得して合意に至ることができるのであれば、慰謝料として支払う金額はいくらでもよいということになります。

 

分割支払いの提案をする

慰謝料を支払う意思はあるけれど、一括で支払うことができないという場合には、分割払いを提案してみます。

現在の経済状況から一括で支払うことができないので、分割にしてほしいとお願いすることになります。

分割方法は、毎月〇万円に分割して、毎月相手が指定した口座へ振込みで支払うことになります。

金融機関の振込手数料が毎月必要になりますが、これは支払う側が負担することが通常です。

なお、基本的に慰謝料は一括で支払うものですから、当然に分割払いが認められるものではありません。

分割の依頼はお願いベースとなります。

相手が同意しなければ、支払う側が勝手に分割にすることはできません。

分割回数や毎月支払う金額は、相手にとっても納得感のある条件にする必要があります。

また、相手から「もし分割金の支払を怠ったときには、残金を一括で支払う」という条件が提示される可能性があります。

そのような条件提示があったとき、こちらはイレギュラーな分割払いを認めてもらった訳ですから、

支払いを怠ったときの残金の一括支払いは、受け入れざるを得ないかもしれません。

分割払いについては、別ページ→「慰謝料を分割払いにするときの注意点」で、くわしく解説しています。

実際の事例では、、
高額の慰謝料を一括で支払うことは難しいことが多いので、分割での支払いで決着するケースが多くあります。

示談書の取り交わしを提案する

慰謝料を支払う側にとって一番注意すべきリスクは、慰謝料を支払ったにもかかわらず、その後も追加的に謝罪や金銭を請求され、いつまでも問題が解決しないことです。

被害者側から「やっぱり納得できない」「慰謝料をもっと払ってほしい」「やはりあなたの配偶者にも不貞の事実を伝える」というようなことを言われてしまうかもしれません。

そのようなことがあれば、いつまでも問題を解決とすることができなくなってしまいます。

このような、追加的な請求や異議を断つため、慰謝料の支払いと同時に、被害者側と示談書(和解合意書)を取り交わします。

被害者側は、今後これ以上責任追及しないこと、示談書の取り交しをもって問題解決とすることなどを約束します。

その一方で、こちらは不倫関係の解消や、慰謝料の支払いなどを約束します。

これらの約束を、示談書(和解合意書)に規定して、双方署名押印をして和解・解決とします。

 

被害者が高額な慰謝料を請求する理由を知る

被害者側が、なぜ相場以上の慰謝料を請求をしてきているのかを知る必要があります。

相手の考えを知ることによって、もしかすると今後の話し合いがスムーズに進むかもしれません。

逆に相手の考えていることが分からなければ、話し合っても上手くいかないかもしれません。

相手の立場、気持ち、考えをできるだけ理解して、お互いに納得して解決できるように配慮しなければなりません。
 

①制裁、意趣返しをしたい

被害者は不貞行為を知り、精神的にとても苦しんでいます。

さらに怒りの感情を抱えていて「だだでは済まさないぞ」と制裁を加える気持ちをもっているかもしれません。

不倫の加害者に対しては、とにかく誠意をもって対応する必要があります。

相手が怒りの感情を隠さず表に出している場合、相手と直接会って話し合うことは難しいかもしれません。

相手とのやり取りは、できる限り記録の残るメール・LINEや書面で行うことが基本になります。

相手から無茶な請求(過大な請求)が続いて、話し合いが進まない場合には、自分たちだけで解決することは難しいでしょう。

そのようなときは、費用がかかってしまいますが弁護士に代理交渉をお願いすることを検討した方が良いかもしれません。

実際の事例では、、
これはよくあるケースといえます。とにかく相場の上限300万円を請求しないと気が済まない。相場の金額では低すぎるのでとても納得できないというように怒りの感情から高額の請求をしているケースがあります。

②こちらの収入、資産の状況を知られている

加害者の収入が高いことを被害者が知っている場合や、親族が一定の資産を有していることを知られていることがあります。

経済的に余裕があることを知られてしまうと、通常よりも高めの慰謝料を請求される可能性があります。

あなたが不倫相手に収入や資産状況を伝えていた場合には、被害者は不倫をしていた配偶者を通じて、あなたの収入や資産に関する情報をつかんでいる可能性があります。

通常、不倫を知った配偶者は、不倫をしていた夫や妻に対して、どのような相手であったのかをこと細かに詰問します。

当事務所では、不倫の被害者側からご相談頂くことが多いのですが、加害者の経済状況をよく把握している人も多くいらっしゃいます。

実際の事例では、、
会社の経営者など高収入の相手に対して高額の請求をする人もいます。中には1千数百万円の慰謝料を請求して、相手との話し合いで示談が成立して、不貞行為の慰謝料で1000万円を超える慰謝料を受け取ったケースもありました。

③減額交渉になることを考慮して高めの請求をしている

交渉方法のひとつとして、慰謝料の減額交渉が入ることを見越して、はじめから高めの慰謝料を請求するということが行われています。

はじめに高めの慰謝料を請求して、高めの金額から交渉をスタートさせて、徐々に金額を下げていくという方法です。

はじめの請求金額が高ければ、多少の減額に応じたとしても、最終的には比較的高い慰謝料金額に着地することになります。

被害者から、そのような見込みをもって慰謝料請求が行われることもあります。

実際の事例では、、
弁護士が相手方に対して慰謝料を請求する場合は、たいていその後の減額交渉を見越して、入口は高めの金額から入っていきます。相手にはじめに請求する金額というのは、ある意味自由に決めることができるので、低い金額から交渉を始めるよりも、高い金額から交渉をはじめた方が話し合いを有利に進めることができます。

④本来負担する必要のない費用が含まれている

相手から探偵・調査費用などについても、慰謝料に含めて請求されることがあります。

しかし、不相当に高額で、本来必要のない調査費用を負担しなければならないということはありません。

探偵費用は稼働させる探偵の人数や期間などであっという間におどろくほど高額になることがあります。

過大な費用をすべてこちらが負担しなければならないというのは適当ではありません。

また、不倫を指摘された当初から素直に不貞行為を認めている場合は、そもそも探偵・調査会社を利用する必要はないといえます。

加害者とすれば上記を理由に、調査費用の支払いを拒んでいくことになるでしょう。

更に、被害者が負担した弁護士費用を請求されることもあります。

過去の判例などから被害者は、弁護士費用の1割程度を、不倫相手に請求することができると考えられます。
 

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